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熊出没予測など、 AIを活用した熊対策の事例を解説

2025.12.10
  • #DX国内
熊の出没件数が年々増加し、人的被害も過去最多を更新するなど、被害の深刻化が止まりません。 特に市街地や生活圏での遭遇が増えており、従来の人的対応だけでは限界を迎えつつあります。  そうした中、注目されているのがAIを活用した熊対策です。  監視や通報、リスク予測などの各段階を支援し、限られた人手では対応しきれない部分を補う手段として導入が進められています。  この記事では、AIを活用した熊対策の背景と、各地で実施されている最新事例を紹介します。 

なぜ熊対策でAI活用が進むのか?背景とAIの有効性を整理

近年の熊被害が急増する中、対策としてAIの活用が注目されています。 

「なぜ熊対策にAIなのか?」と疑問を感じる方のために、熊被害や対策の現状とAIの有効性について以下の3点に分けて解説します。

  • 急増する熊の出没件数や被害等
  • 対策の限界
  • 上智大学の「クマ遭遇AI予測マップ」から見る、AI活用の有効性 

急増する熊の出没件数や被害等

近年の熊との遭遇状況は、これまでの常識では考えにくいペースで悪化しています。 

2025年度上半期の全国出没件数は2万792件に達し、半期の数値でありながら前年度の年間件数を超えました。 

人身被害も深刻で、すでに13人の死亡が報告され、過去最多を更新しています。(2025年11月5日時点) 

特に、人家の周辺や市街地での遭遇が7割を超えており、生活圏と熊の行動圏が重なりつつある現状が浮き彫りです。 

さらに地域ごとの偏りも顕著で、岩手県の4,499件や秋田県の4,005件など、東北地方だけで全国の6割以上を占めています。 

こうした出没増加に伴い、捕獲数は6,063頭に達し、これも統計開始以来の高い水準となりました。 

駆除数が膨らむ一方で、被害が収まらないという状況からは、事態の深刻さがうかがえます。

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対策の限界

熊被害の増加は、これまでの人的対応だけでは追いつかない現状を示しています。 

自治体職員やハンターだけでは、市街地や農地に出没するすべての熊に対応するのは困難です。 

捕獲や処理だけでなく、箱罠の設置や巡回も行われていますが、人手不足が否めません。 

さらに、人に慣れた個体や生活圏に定着した熊は再び人里に現れることがあり、増加する熊被害に対応しきれないのが現状です。 

短期的には自衛隊など外部支援で負担を補えますが、中長期的には地域に根ざしたハンターの育成や生息数調査を進める必要があります。 

そのうえで、マンパワー中心の従来策だけでは限界があるため、ゾーニングや監視システムの導入など人的対応に頼らない持続的な対策を組み合わせることが重要です。 

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上智大学の「クマ遭遇AI予測マップ」から見る、AI活用の有効性

AIを用いた予測手法は、多様な要因が絡み合う熊対策において、人的対応を補う心強い手段です。 

その一例として、上智大学大学院の中許眞氏と深澤佑介准教授が実装した、「クマ遭遇AI予測マップ」が挙げられます。 

このマップは、時系列データ・気象・土地利用・標高・人口構成などの複数のデータから、遭遇リスクを高精度で予測することができます。 

複雑な要因をまとめて分析できるAIの強みを活かすことで、従来の人が個別の兆候を追う方法より、広範囲のリスクを一度に把握できるようになりました。 

研究成果は住民向けの予測マップとして公開され、巡回ルートづくりや注意喚起に役立ち始めています。 

地域ごとの危険度を事前に可視化できれば、住民への情報提供も迅速になり、限られた人員を重点地域へ振り分ける運用が可能です。 

人手中心の対策が限界に達しつつある現状において、このようなAIを活用した取り組みの有効性は一段と高まっています。 

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AI活用による熊・獣害対策の最新事例を紹介

ここからは、実際にどのようにAIが活用されているかを把握するため、熊・獣害対策にAIを取り入れた3つの最新事例を紹介します。 

  • 日本気象株式会社:本州全域を対象とした「クマ遭遇リスクマップ」
  • ㈱ほくつう・北陸電力㈱:クマなどの出没をリアルタイムで把握する「Bアラート」
  • 山形県朝日町・㈱デンソー・ダイワ通信㈱:害獣を高精度で検出・通報する「AIスマートポール」

日本気象株式会社:本州全域を対象とした「クマ遭遇リスクマップ」

日本気象株式会社(以下、「日本気象」)は、AIを生かした広域解析により、本州全域を対象とした「クマ遭遇リスクマップ」を開発しました。 

このマップでは、評価の対象を「熊の生息地」ではなく「人の生活圏での遭遇リスク」に絞り、地図上で警戒すべき場所を事前に把握することができます。 

従来の評価は過去の出没地点を基準としていたため、情報が少ない空白地帯のリスク評価が難しいという課題がありました。 

そこで日本気象は、気象分野で培った解析技術を応用し、地形・植生・土地利用・気候値など多様なデータをAI学習に取り入れました。 

これにより、人と熊が遭遇しやすい場所の特徴を評価できるようになり、過去に出没情報が少ない地域でもリスクを見落としにくくなっています。 

マップでは、川沿いの林や見通しの悪い草地などは遭遇しやすい環境として示され、実際の事故と一致した例も確認されています。 

生活圏での危険が把握しやすいため、住民への注意喚起や巡回の計画に活用しやすい一方で、普段人が立ち入らない山林内は低リスクとされる点には注意が必要です。 

日本気象の「クマ遭遇リスクマップ」は、生活圏に特化した危険を具体的に示す取り組みであり、地域での安全づくりに貢献しています。

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㈱ほくつう・北陸電力㈱:クマなどの出没をリアルタイムで把握する「Bアラート」

株式会社ほくつうと北陸電力株式会社が開発した「Bアラート」は、熊の出没を早期に把握するための画像判別システムです。 

AIが動物の姿を映した画像を読み取り、熊を検出した際に担当者へ自動通知します。 

従来のセンサーカメラは人や車の映り込みによる空打ち(対象ではないものに反応すること)が多く、内容の真偽を確認する必要があるなど現場の負担が大きい点が課題でした。 

そこでBアラートは、約6万枚の画像を学習したAIで不要な画像を除外し、必要な情報だけを届ける仕組みを備えました。 

AIの判別精度は99%に達しており、担当者はメール通知で状況を把握できるため、現場の負担軽減につながります。 

また、既存カメラを活用できることで導入しやすく、目的に応じてリアルタイム通報とデータ処理の二つの使用方法から選べる点も特徴です。 

富山県で実施された2021年の実証実験では、目撃情報と比較して発見までの時間が約1時間短縮され、迅速な初動対応に貢献しました。 

2024年度以降は富山県内に24台を設置し、2025年の目撃・痕跡情報25件のうち14件がBアラート経由で、その実用性が示されています。 

さらに砺波市福山地区では、Bアラートで熊の姿を確認すると自治会のLINEグループに即時共有される仕組みを取り入れ、導入後は人身被害が発生していません。 

Bアラートは北陸をはじめ複数の自治体へ広がり、AIを活かした熊対策として地域の安全確保に役立っています。

参照

山形県朝日町・㈱デンソー・ダイワ通信㈱:害獣を高精度で検出・通報する「AIスマートポール」

AI技術を活用した「AIスマートポール」は、害獣や不審者を即時に検知し、地域の見守りや農作物被害の抑制に役立つ新しい仕組みです。 

山形県朝日町は、株式会社デンソー(以下、「デンソー」)とダイワ通信株式会社(以下、「ダイワ通信」)と連携し、2024年10月から12月にかけて実証実験を行いました。 

背景には、町内で深刻化する熊やイノシシによる被害の増加と、高齢化や人手不足による従来の監視体制の限界があります。 

AIスマートポールは、デンソーのスマートポールとダイワ通信のAI端末「IWA BOX」を組み合わせて構成されています。 

AIが動物や人物の動きを解析し、特定の害獣や不審者を検知した際には、光や音を発してその場から追い払う仕組みです。 

また、得られた情報は無線ネットワークを通じて庁舎に集約され、管理センターや関係者のスマートフォンにリアルタイムで通知されます。 

庁舎では、統合管理システムに蓄積された情報を活用し、将来的な出没予測や対策にもつなげていく構想です。 

現場の負担を軽減しながら、的確な通報と対応を可能にしたAIスマートポールは、住民の安心と野生動物との共生を支える実践的な技術として注目されています。

参照

まとめ

熊被害が生活圏に及ぶ中、住民の安全を守るための仕組みづくりが急務となっています。 

各地で導入が進むAI活用型の熊対策は、監視・通報・予測といった複数の局面で実用性を示し、従来の人的対応を補完する存在として機能しています。