サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは?
2015年の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以降、企業には環境・社会課題を意識した持続可能な経営が求められるようになりました。
こうした流れの中で近年注目されているのが、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」です。
SXとは「Sustainability Transformation」の略称で、企業の成長と社会課題の解決を両立させる経営変革を指します。
従来の利益重視の経営だけではなく、脱炭素やESG、人的資本、サプライチェーン改革などを含めて、中長期的な企業価値を高める考え方として注目されています。
日本では、経済産業省が2020年にSXの重要性を提唱して以降、多くの企業でサステナビリティ経営への取り組みが進んでいます。
近年はAIやデジタル技術の進化、市場環境の急速な変化などにより、企業には変化への柔軟な対応力が求められています。
こうした時代において、SXは企業の競争力向上や持続的成長を支える重要な経営戦略の一つとなっています。
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)が注目される理由
続いてサステナビリティトランスフォーメーションが注目される理由について解説していきます。
不確実性の高まり
近年は、AIやデジタル技術の急速な進化による産業構造の変化に加え、地球温暖化などの環境問題、地政学リスク、原材料価格の高騰、人手不足など、企業を取り巻く環境が大きく変化しています。
さらに、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、サプライチェーンの見直しや働き方改革、デジタル化への対応など、多くの企業で経営環境が大きく変化しました。
こうした先行きが見えにくい時代においては、短期的な利益だけではなく、変化に柔軟に対応しながら持続的に成長できる企業経営が重要視されています。
そのため近年では、環境・社会課題への対応と企業成長を両立させる「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」への注目が高まっています。
中長期的な企業の成長課題
不確実性が高まりを見せていく中、企業のサステナビリティを高めていくには、長期の時間軸を前提にした投資家との対話を行っていく必要があるとされています。
対話の中では、短期的な業績の向上のみならず長期的な戦略方針を立てることが重要です。
しかし、企業と投資家の間では以下のような認識のギャップがあると経済産業省は示しています。
- 多角化経営・事業ポートフォリオ・マネジメント
- 新規事業創出・イノベーションに対する種植え
- ESG/SDGs などの社会的価値と経済的価値の両立・アラインメントの確保に向けた取組
サステナビリティ・トランスフォーメーションではこうした認識の齟齬を減らし「企業・投資家双方が、前提としている時間軸を、意識的に5年、10 年という長期の時間軸に引き延ばし、共通の「長期の時間軸」を前提に、対話を行っていくことが必要」としています。
また、米国デロイトトーマツの情報サイト「Deloitte Insights」の論文紹介によると、
「気候変動は前例のない規模の危機であり、広範囲の持続可能性リスクを増大させる恐れがあります。組織は対応する圧力が高まっています。多くの人は、将来のビジネスの成長のための新しい機会と道を見つけるために、ビジネスモデルを持続的に変革する必要があります」
と警鐘を鳴らしています。
こうした環境の変化、テクノロジーの発達などの外部環境の急速な変化に対応するためのサステナビリティ・トランスフォーメーションが注目されているのです。
参照
消費者意識の変化
昨今、環境の変化に伴い、エシカル消費が注目を浴びています。
消費者庁によると、エシカル消費(論理的消費)は以下の様に解説されています。
「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。」
消費者庁が行った「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査によると「エシカル消費について、どの程度興味がありますか。」について2016年の調査では、約36%に対して、2020年の調査では約60%と大幅に上昇していることが分かります。
SXとDX、GXの違いは?
SXと似た言葉として、DXやGXが挙げられますが、この3つの違いは何なのでしょうか。
経済産業省によると以下の通りとなっています。
SX
企業が持続的に成長原資を生み出し、企業価値を高めるべく(「企業のサステナビリティ」の向上)、社会のサステナビリティ課題に由来する中長期的なリスクや事業機会を踏まえ(「社会のサステナビリティ」との同期化)、資本効率性を意識した経営・事業変革を投資家等との間の建設的な対話を通じて実行すること
GX
グリーントランスフォーメーションの略。
簡単に言うと、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のこと。
DX
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
経済産業省はSXやGXについては、これらをさらに効果的かつ迅速に推進していくために、DXと一体的に取り組んでいくこと
が望まれるとしています。
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を実現するには
では、サステナビリティ・トランスフォーメーションを実現させるためにはどういったことが求められるのでしょうか。
企業のサステナビリティを高める
企業のサステナビリティを高めるにはどうしたら良いのでしょうか。経産省によると企業としてのサステナビリティ(稼ぐ力)は下記の様に定義されています。
企業としての稼ぐ力(強み・競争優位性・ビジネスモデル)を中長期で持続化・強化する、事業ポートフォリオ・マネジメントやイノベーション等に対する種植え等の取組を通じて、企業のサステナビリティを高めていくこと
社会のサステナビリティを高める
また、同資料によると社会のサステナビリティを高めるためには下記の通りとされています。
不確実性に備え、社会のサステナビリティをバックキャストして、企業としての稼ぐ力の持続性・成長性に対する中長期的な「リスク」と「オポチュニティ」双方を把握し、それを具体的な経営に反映させていくこと
サステナビリティ・トランスフォーメーションを実現するためには、「企業」と「社会」の持続可能性を高めるために投資家との対話をとおして実現させていくことが重要とされています。
補足として、SXの取り組みを具体化させるために、2021年5月に経産省は「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を立ち上げました。
本研究会では「社会のサステナビリティ」を取り込んだ経営や企業と投資家との対話の在り方の課題の明確化にしていくとされています。今後も研究会はSXについての情報開示を積極的にしていく方向性です。
SXに必要とされるダイナミック・ケイパビリティとは
ダイナミック・ケイパビリティとはデイヴィッド・J・ティース氏が提唱した戦略経営論です。
これを端的に言うと「環境変化などの不確実性の高まり」に対しての組織の自己変革能力を指します。SXの実現にはこの適応能力が必要とされ、組織全体で変化をしていかなければなりません。
ダイナミック・ケイパビリティについて経産省が発表した「2020年度版ものづくり白書」によると以下の様な3つの能力が必要とされています。
- 脅威・機会の感知(Sensing)
- 機会を捕捉して、資源を再構成・再統合し、競争優位を獲得(Seizing)
- 競争優位性を持続可能なものにするために組織全体を変容(Transforming)
サステナビリティ・トランスフォーメーションのまとめ
サステナビリティ・トランスフォーメーションとは、企業と社会それぞれのサステナビリティを組み合わせ事業経営に組み込んでいく変革です。
これからの世界では、環境問題やテクノロジーの変化に対応するための「持続可能性」を持ち合わせることが企業の生き残りを左右すると言っても過言ではありません。本記事がSXについての参考になれば幸いです。


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